遠回りが、自分の原点になった——市場調査・Web制作・事業会社を経て、中小企業のWeb活用支援へ

クライアントへの提案資料を作っていると、ときどき手が止まるようになっていました。

SNS運用の改善案、コンテンツマーケティングの進め方、広告の出稿戦略。他社の事例や調査データをもとに組み立てた提案は、ロジックとしては成立しています。でも、あるとき「自分はこれをやったことがあるのか?」という問いが頭に浮かんで、そのまま消えなくなりました。

SNSを継続的に運用したことがあるか。
事業会社のマーケターとして、限られた予算の中で何かを動かしたことがあるか。
広報担当者として「うちのことを世の中に知ってもらう」ために試行錯誤したことがあるか。

どれも「ない」でした。

「私の提案って、机上の空論になっていないだろうか。」

この問いが引っかかり始めたのが、転職を考えるきっかけでした。

最初の10年間は、市場調査の仕事

新卒で入社したのは市場調査の会社です。企業の依頼を受けて調査を企画し、アンケートやインタビューを実施して、データを集計して報告書にまとめる。この仕事を10年続けました。

「この新商品は誰に響くか」「このサービスのどこが使いにくいか」を調べて届ける仕事は、クライアントの意思決定を支える意義のある仕事でした。
特にインタビューで本音を引き出せたときや、数字の裏側にある行動パターンを読み解けたときは、純粋に面白いと思っていました。

ただ、一つずっと気になっていたことがありました。
報告書を出したあと、クライアントがどう動いたか、あまりわからないんです。
改善が起きるまでに時間がかかるし、その結果がまた数ヶ月後にしか出てこない。
自分が届けた情報がどこでどう活きたのか、見えにくい仕事でもありました。

「もっとスピード感のある仕事がしたい」「アクションまで一緒に進められる仕事がしたい」という気持ちが、じわじわと大きくなっていきました。

Webに手を挙げた理由

転機は、社内の新規事業でした。会社がWebマーケティング事業を立ち上げることになり、メンバーを社内公募するという話が出てきたんです。私はすぐに手を挙げました。

Webは、結果が速い。施策を打てば翌日には数字に出るし、改善してまた試せる。コンテンツを公開すれば、どこから来てどこで読むのをやめたかもリアルタイムでわかる。市場調査では見えにくかった「自分が届けたものが、ちゃんと機能しているか」が、Webでは数字として直接返ってくる感覚がありました。

この面白さを実感するほどに、もっと本格的にやりたいという気持ちが強くなり、数年後にWeb制作会社へ転職しました。

Web制作会社でのディレクター経験

Web制作会社では、Webディレクターとして働きました。サイトを作るだけでなく、公開後の運用支援まで担当するポジションです。アクセス解析をもとに改善提案を行い、コンテンツの企画を提案し、問い合わせ数の変化をクライアントと一緒に追っていく。

この仕事は好きでした。施策を打った月に数字が伸びたとき、クライアントと同じ感情で喜べる瞬間があります。「Webって面白いですよね」と言い合える関係が生まれる。制作会社にいながら事業の結果に近いところにいられる、そういう仕事だったと思います。

ただ、この時期に冒頭の問いが生まれました。

提案の根拠はデータや他社事例です。論理は成立している。でも、自分自身がSNSを運用し続けた経験はないし、限られた予算の中で「どれを優先するか」を自分で決め続けた経験もない。
クライアントに「こうすべき」と言えるのは、外側から見ているからかもしれない。実際にその立場に立ったら、自分が提案したことをそのまま実行できるだろうか。

知識を抽象化して提案に活かすことは、この仕事の本質だと思っています。今もそう思っています。ただ当時の自分には、「運営者として動いた経験」がまだ一度もなかった。それが気になっていました。

支援する側から、される側へ

「一度、支援される側に立ってみたい。」

この思いから、次は事業会社に転職しました。Web・広報の担当者として、自社製品の販促活動やPR業務を担うことになりました。広報専門の部署はなく、この役割を担うのは社内で自分一人。制作会社のディレクターとして「提案する立場」にいた私が、今度は「実行する立場」に立ちました。

Webサイトを自分で更新して、プレスリリースを書いて、SNSアカウントを運用する。展示会の告知をどの媒体で打つか考えて、費用対効果を自分で判断する。外部に発注できない部分は全部自分で作る。

やってみると、わかっていなかったことがたくさんありました。

まずリソースの問題です。
制作会社にいたとき、「このコンテンツ施策を継続してください」と提案していました。
でも実際に担当者一人でそれをやろうとすると、「継続」がいかに大変かがわかる。
他の業務と並行しながら、反応がなくてもとにかく続ける。そのしんどさは、やってみないとわかりませんでした。

次に、優先順位の難しさです。やれることは無数にあって、でも時間も予算も有限で、「何を先にやるか」を自分で決めなければならない。外部のアドバイスが参考にはなっても、最後に決めるのは自分。その孤独感みたいなものは、外側にいると見えにくいと思います。

この経験が、提案の言葉を変えました。以前は「こうした方がいい」という言い方をしていたところが、「こうした方がいい、ただし最初の1ヶ月はここだけに絞ってみましょう」という言い方になっていく。机上の空論ではなく、動かせる提案を考えるようになりました。

中小企業の経営者と話して気づいたこと

事業会社で働く中で、中小企業の経営者と直接話す機会が増えました。
業界のイベントや商談の場で出会う方たちは、Webやデジタルマーケティングに可能性は感じていても、「何から手をつければいいかわからない」「試してみたけど効果が出なかった」「詳しい人に継続的に相談できる環境がない」という状況にある方が少なくありませんでした。

話を聞いているうちに、少しずつ思うことが出てきました。

市場調査でデータを読む経験をして、Web制作で伴走支援の形を学んで、事業会社で実行者として動いた。この組み合わせで動ける人間は、そう多くないかもしれない。
制作もできて、運用も見られて、事業会社の担当者が何に詰まるかも肌でわかる。
そういう人が近くにいたら、少し楽になる経営者がいるんじゃないか、と。

自分の知見が、役に立てる場所があるかもしれない。そう思い始めたのは、この時期のことです。

遠回りして、よかったと思っていること

市場調査会社での10年。Web制作会社でのディレクター。事業会社でのWeb・広報担当。客観的に見ると、ずいぶん遠回りなキャリアです。

でも今は、この遠回りで得たものが自分の仕事の根っこにあると思っています。

「自分が一度でも同じ立場で考えたことがある人間として、提案したい。」

これが今の自分のスタンスです。すべてを経験することは当然できません。でも、運営者として動いた経験があると、提案の解像度が変わります。
「できます」だけでなく「ここが難しくなるので、こう進めましょう」という言い方ができるようになる。そのためにあの遠回りは必要だったと、今は思っています。

現在はツギテとして独立し、中小企業のWeb活用支援を行っています。
Webサイトの制作から、公開後の運用改善、集客の仕組みづくりまで——できる限り長くお付き合いしながら、一緒に結果を作っていくことを大切にしています。

経営者の方に「こうすべきです」と言うだけじゃなくて、「では、一緒にやってみましょう」と言える関係でいたい。それがツギテの仕事のスタイルです。


ツギテでは、中小企業のWeb活用を一緒に考えるパートナーとして動いています。
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